2012/10/27 我々はイヌイットにはなれない―その1 @名古屋 内科
2012年10月27日
秋深くなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
最近のうれしいニュースは、何と言っても京大・山中教授のiPS細胞に対するノーベル賞授与のことですね。
実用に向けての、さらなる成果を期待したいと思います。
さて前回の続きですが、厳しい糖質制限食の欠点について、述べます。
厳しい糖質制限食を試みると、白米、麺類、パンをはじめとして、ニンジン、カボチャ、レンコン、イモ類(こんにゃく以外)をほとんど食べない訳ですから、代わりに肉、魚、卵、葉や茎の野菜、といった食材の比率が増えます。
肉、魚のうち、一般に好まれているのは牛肉、豚肉、まぐろあたりでしょうか。
これらは肉質が赤く、赤肉と呼ばれます。
これらを食べ過ぎると糖尿病の発症が増えることを、既に述べました(2012/09/12参照)。
そこではメカニズムを述べませんでしたが、推察されているのは、赤肉に含まれるミオグロビン、さらにその中に含まれるヘム鉄の摂りすぎが、貯蔵鉄の過剰を産み、これが強い酸化作用を介して膵臓のβ細胞を攻撃し、長年にわたると膵臓の萎縮、さらにはインスリン分泌の低下をきたす、と考えられています。
糖尿病の治療として糖質制限しているのに、長期間続けた時に赤肉の摂取が増えると糖尿病が悪化することが予想され、これでは本末転倒です。
だから糖質制限した分を補うのは植物性タンパク質や植物性脂質を中心にして、肉類ならば白身魚やイカといった白肉の方が安全、と述べているわけです。
なお、シャケも白身魚ですので、念のため。
また赤肉の摂取過剰、とくにハムやソーセージといった加工肉の摂取過剰は、世界的には大腸がんの発生とも関係があるとされています。
日本人ではこれらの摂取過剰と大腸がんの発生との関連はあまり強くない、と報告されてはいますが、やはりこれも無視できない情報です。
しかし、糖尿病やがんになる確率を減らしたいからといって、おいしい牛肉を一生食べられないのでは、あまりにも悲しいですよね。
なので少なくとも、糖質制限の際には、これの摂取量が増えないようにしましょう、ということです。
こういった意味で、白身魚とオリーブ油をふんだんに使った地中海食が、健康食として世界的に認められている、ということになります。
イタリアで重宝されるパスタは、白米に比べてGI値(血糖指数)が少ないことも、強調しておきたい事実です。
なので私は、何を食べようか迷った時は、可能ならばパスタ、あるいはソバを食べています。
愛知県名古屋市千種区にある内科で食事療法による高血圧や糖尿病治療ならむらもとクリニックへ