高血圧とは
心臓は毎分50~80回ぐらい、血液を血管へと押し出しています。
心臓が収縮した瞬間は血管に一番強く圧力がかかり、これを収縮期血圧(最高血圧)と言います。そして、心臓が拡がる(拡張する)には圧力が一番低くなり、これを拡張期血圧(最低血圧)と言います。
収縮期血圧と拡張期血圧のどちらが高くても、高血圧と言います。
水道のホースに水を流すことに例えてみますと、水の流量を多くした時や、どこかでホースを押さえつけて通りにくくした時に、高い水圧がかかります。これと同じように血圧も、心臓が送り出す血液の量(心拍出量)と、それを流す血管の通りづらさ(末梢血管の抵抗)とで決まります。
高血圧の原因と症状
大部分は原因がはっきりしない
高血圧の中で、はっきりした原因が存在する高血圧を二次性高血圧(症候性高血圧)と言いますが、これは全体の1割もありません。
日本人の高血圧の大部分は原因が特定できない高血圧で、これを本態性高血圧と呼んでいます。実際には長年の食事内容やストレスなどが大きな要因と思われます。不眠や喫煙なども、血圧を上げる原因となります。
高血圧特有の自覚症状はない
高血圧になっても、自覚症状はほとんどないと言ってさしつかえありません。
人によっては、肩こりがひどくなったとか、頭痛がするようになったとかおっしゃる方がありますが、これらも高血圧の特有の症状ではなく、多くは関係がありません。
そのため、定期的に血圧を測っていないと高血圧を発見することは難しく、そのため、健診が重要です。
また、せっかく定期健診で早めに発見され、高血圧について精密検査を受けるよう言われても、「元気で全く問題ないから」といって放置される方が、実際多くいらっしゃいます。放置すると、ひどい動脈硬化になったり、後に狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などの発作を起こす恐れがあります。これらが命に関わる病気だということはご存知の通りです。
日本人には高血圧の方がとても多く、成人の約3分の1は高血圧と推定されています。しかし、実際に治療を受けておられるのは約700万人にすぎません。治療を受けていない方々は、長年かかってひそかに血管が蝕まれていき、ある日突然、上に述べたような発作をおこします。そのため高血圧は「サイレント・キラー」とも呼ばれています。
血圧の測定
血圧計で血圧を測る
実際に高血圧かどうかの診断は、診察室で、水銀血圧計ないしそれと同程度に正確な自動血圧計で正しく測った数値で判断されています。
しかし問題は、活動中の血圧は、運動や精神面の状況などによって常に変動していることです。そこで、血圧を正確に測るには、少なくとも数分間は座って安静にしてから、測ることが望ましいのです。
また、カフェインが含まれている飲み物を飲んだ後や、たばこを吸った後なども血圧が変動するので、血圧を測定するには好ましくありません。
高血圧の基準は、収縮期血圧140mmHgまたは拡張期血圧90mmHg以上
高血圧かどうかの診断には基準が決められています。
WHOなどの基準もありますが、日本では、日本高血圧学会が日本人向けの高血圧治療ガイドラインとして、分類を行っています。
http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/kouketuatu.html
近年、大規模な縦断的調査(ある人の年月を追ってその後の状態を調べていく調査)が次々と行われています。高血圧の基準も、そうした多くの調査の結果をもとに、きちんとしたデータの裏づけがあって、決められています。
家庭での血圧値が重視されている
病院や診療所で測る血圧(外来血圧)の他に、最近重視されているのが、家庭血圧です。病院や診療所では緊張してしまい、本来のその人の血圧よりも数値が高く出てしまう方が多く、白衣現象と呼ばれています。それよりも普段、1日の大半を過ごしている自宅での血圧こそ、その人の本来の血圧であり、家庭での血圧が高い人は、それを正常化させることが有意義であると考えられるからです。
また、自動血圧計が進化し、非常に正確になったことも、家庭血圧測定が重要視されるようになったことに関係しています。ただし、指先や手首で測るタイプの血圧計では、あまり正確に測れないため、使わないでいただきたいと思います。
測定するときは、心臓とほぼ同じ高さで、「上腕(二の腕)の血圧を測る」と決められています。
正しく測るために、次のようなことに気をつけて測るようにしてください。
家庭血圧の正しい測り方
いつ測るか
- 朝と夜、それぞれ少なくとも1回は測る。
- 朝は起きてから1時間以内に、排尿後で、朝食前、降圧薬を飲む前に、いつもの自分のすわる姿勢で測る。測る前1~2分ぐらいは安静にする。
- 夜は寝る前に、いつもの自分の座る姿勢で測る。測る前1~2分ぐらいは安静に。
- できるだけいつも同じ時刻に測る。ただしこれらの測定タイミングは、患者さんの生活様式によっては、より好ましいタイミングに変更することもあります。指示に従ってください。
- 1週間に何日測るかは、医師と相談して決める。血圧がよくコントロールされている時は、少なくとも週に3日、薬を変えた時や初めて治療を始める時には少なくとも週に5日というのが、日本高血圧学会の指針です。
- 測った結果はすべて正直にノートなどに記録し、医師にみせる。時刻と心拍数も一緒に記録しましょう。
どのように測るか
- 服はまくりあげて、裸の二の腕にカフを巻く。
- カフは肘関節にかからないように巻く。
- 腕は机などに乗せ、心臓と上腕が同じ高さになるようにする。腕は前に伸ばして、上腕の緊張を解く。
- 極端に腕が太い人は大型カフを、極端に細い人は小型カフを用いるのが望ましい。
※測る腕は利き腕の反対が原則。
左右の血圧差が大きい場合は、高い血圧を示す方で測りましょう。