2013/08/16 第2次大戦が残したもの~糖尿病発症との関連 @名古屋 内科

2013/08/16 第2次大戦が残したもの~糖尿病発症との関連 @名古屋 内科

2013年08月16日

本日は終戦記念日でした。
いえ、12時をまわって、これを書いているのは16日ですが。
そこで、今回は緊急寄稿で、戦争の遺産について述べます。
戦争が、糖尿病発症と関連あるかも、と聞いたら、皆さん、ピンとくるでしょうか。
しかし、これを裏付ける、最近話題の学説があるのです。

2型糖尿病の発症が、過食と運動不足だけのせいではないのは明らかです。
近年、糖尿病患者が確実に増えているのは、我が国を中心とする東アジア、また西ヨーロッパに集中していると言われています。共通するのは何でしょうか。
二次大戦の時に三国同盟を組んでいた日本・ドイツ・イタリアと、その周辺国です。

これらの国々は戦禍にさらされることによって、食料不足が戦後も含めて何年も続きました。そして低栄養状態の妊婦さんから生まれてきた子供たちは、現在60歳代半ば~70歳代前半といったところでしょうが、これらの人々が2型糖尿病になりやすいと考えられているのです。

つまり、母体内で低栄養状態で育った胎児は、低栄養に合うような代謝プログラムが作られ、それから出生するため、成人になった時には、普通の食事でも太りやすく、その上、2型糖尿病や脂質異常症になりやすくなっている訳です。
実際、出生時体重の軽い赤ちゃんが、後に2型糖尿病になりやすいことは、昔から知られています。
蛇足ですが、戦中戦後に限らず近年でも、女性に「やせ願望」があったりすると、赤ちゃんは出生時体重が軽くなる傾向があるため、現在60歳よりも若い人たちにも2型糖尿病が増えており、今後も増え続ける可能性がある訳です。

もともとは20年も前に、イギリスのBaker博士が提唱した「胎内プログラミング仮説」と呼ばれていたものがあり、胎内で、特に6か月までの栄養状態が、出生後の健康に影響を与える上で重要、というものでした。
近年では仮説にとどまらず、様々な方面から実証が進んでおり、胎児期から幼小児期の環境が成人期の慢性疾患のリスクを決める、という意味でDevelopmental Origins of Health and Disease(DOHaD)というキーワードが創られ、これに関する国際学会、また我が国にも研究会が発足しています。

私はこの学説に大いに興味を持っています。
もしもこのブログを読んでおられる方の中に、現在妊娠初期、あるいはこれから妊娠希望の女性がおられましたら、妊娠中は是非しっかり食べて、ただし、ご自身が妊娠糖尿病にならない程度に保って欲しいと願います。
妊娠を通じて、母体の体重は9~12kgほど増加するのが望ましいそうです。
お母さんは、自分が適度に太ることで、赤ちゃんを病気から守っている、と言ったらおおげさでしょうか。

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