2014/07/21 新規糖尿病治療薬 SGLT2阻害薬について @千種区 内科
2014年07月22日
名古屋市では、まだ梅雨明けしておりませんが、暑さは夏本番ですね。
熱中症対策、いかがですが。今年も暑い夏になりそうです。
私は、高血圧症の患者さんのうち、日頃塩分をしっかり控えておられる方には、「夏は塩分を控えすぎないように」と、減塩対策を緩めるようにしております。
日頃の減塩の程度については、尿検査で知ることができ、とても有用です。
(本文中の高血圧の治療②を参照→)。www.muramoto-clinic.com/menu03/004/
今年の春は、新規糖尿病治療薬が、各社から発売されました。
SGLT2阻害薬といって、従来の経口糖尿病薬と違って、尿中にグルコースを積極的に排泄させることで、血糖値を下げるものです。
この薬は、血糖を下げる機序が単純ですが、奥が深い、と感じています。
糖尿病の治療法の新しい手段を与えてくれただけでなく、糖尿病について新しい知識をつけ加えてくれた、と思うのです。
そこで、SGLT2受容体について、勉強してみましょう。
腎臓は、糸球体という構造に流れ込んできた血液をいったん濾過し、たくさんの物質のうち、必要なものを選んで、もう一度血管内に吸収する仕組みを持っています。
なぜ、このような、一見面倒くさい過程を経るのか?
必要ないものを選んで濾過する(捨てる)ほうが手っ取り早いのではないか?
こんな疑問が浮かぶのも当然ですが、「その方法では、未知の物質が腎臓に流れ込んできたときに、濾過すべきかどうか、対処できない。逆に、本当に必要なものだけがしっかりリストアップされており、それらを再吸収する方が確実であるから。」
これは我々にとって、医学部の中で学習済みの重要な事実です。
さて腎臓の尿細管には、SGLT2、およびSGLT1という2種類の受容体が存在し、いったん糸球体に濾過されたグルコースを、積極的に血管内へ再吸収する役割を担っています。
この結果として、健康人では尿にグルコースは排泄されないのです。
グルコースが再吸収されるのは、体にとても必要なものだからです。
ところで今日でも、人間はそもそも糖質を摂取する必要はない、として、厳しい糖質制限食を続ければ健康で長生き、と主張している人達がいます。
実際、半年ちかく前のテレビ番組に出演された某医師が、「炭水化物は毒」と主張されている様子を、動画サイトで拝見しました。
テレビによく出演される有名医師や美食家が数人参加した団体もあるようです。
これらこそ、前回のブログと同様に、「皆さんを惑わせる怪しい情報」、ですね。
なにしろテレビは影響力が強いので、注意が必要です。
もしも糖質(炭水化物)が人間にとって必要ないならば、上に述べた腎臓の働きが、矛盾していることになりますね。
しかも、糖尿病になった患者さんにおいて、このSGLT2受容体は、健康な人よりも増加していることが知られています。
糖尿病予備軍から糖尿病になっていく過程で、尿細管に通常よりもたくさんのグルコースが毎日流れてくるため、これをしっかり血管内に戻そうとして、受容体の数が次第に増えていったのです。
糖尿病の状態では、血管内が危機的な高血糖であるわけですから、受容体の数が増えなかったとすれば、尿にどんどん尿糖が出て、高血糖を少しでも緩和できるというのに、腎臓はそのような行動をとらない。
なるべくグルコースを血管内に戻すべく、頑張っていることになります。
この事実も、グルコースが大切なエネルギー源であることを示しています。
しっかり考察すれば、こういった真実は比較的簡単に見えてくるものです。
何か新しいことを耳にしたら、常に「眉にツバをつける」感覚で、一歩ひいて考えることをお勧めします。
SGLT2阻害薬をどう使うべきかは、後ほど述べます。
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