新規糖尿病薬SGLT2阻害薬についてーその2

新規糖尿病薬SGLT2阻害薬についてーその2

2014年10月13日

今年は何かと台風に神経を使う年になりました。本日は台風19号の風の中、ブログを書いています。
それにしても体操世界選手権での内村選手の個人総合5連覇はすごかった。
少し前ですが、テニス錦織選手の、全米オープン準優勝もすごかった。
どちらの選手も、現状に満足しない向上心が並外れていると感じます。
これから先も、夢をみさせてくれるものと信じています。

さて先日、新規糖尿病薬SGLT2阻害薬について、この薬の開発者である、大阪大学薬理学教授の金井好克先生の講演を拝聴してきました。おかげで知識が深まり、この薬の適切な使用法がはっきりしました。
SGLT2阻害薬は、日本では2014年4月中旬に第1号薬が発売され、その後各社からの発売が相次ぎ、現在のところ、5社から6製品が発売、使用できる状況になっています。
先のブログでも述べたように、尿中へグルコースをわざと排泄させて血糖値を下げます。
腎臓に作用して効果を発揮する薬のため、腎機能がよいことが使用条件です。

薬効は単純ですが、利点とされる特徴がいくつかあります。
体重が減る。平均すると-3kg前後。主に内臓脂肪が減る。
②インスリン分泌を刺激せずに1日中ほぼ均等に血糖値を下げ、朝の空腹時血糖値も下がる。
③ひどい高血糖の時ほどよく効く(血糖依存性あり、と言う)。
④糖尿病性腎症の患者さんの尿中アルブミンを減少させる。
⑤尿へのナトリウム排泄が増えることと、体重減少も手伝って、血圧も下がる。

②から⑤の特徴は、医師にとっては重視したい利点です。
しかも、①の体重減少効果をはっきり期待できる内服薬は今まで存在しなかったため、努力の甲斐なく、なかなかやせられなかった患者さんにとって、重宝されているようです。
現実的に、この薬に適した患者さんは、比較的若い、肥満の2型糖尿病患者さんで、食欲旺盛なあまり食事療法が困難で、やせられなかった人、イメージ的には元気な働き盛りの人、と考えられます。
軽症の高血圧症を合併していれば、最適です。

一方、この薬には注意すべき副作用があり、以下のごとくです。
⑥尿量が増え、頻尿になる(1時間に1回ほど)。
⑦このため、こまめに水分補給する必要があり、怠ると脱水症におちいる。
⑧尿中グルコース量が多いため、膀胱や腎臓や性器に感染症を生じることがある。
⑨多剤併用、とくにインスリンとの併用で、低血糖をおこす。
⑩ケトアシドーシスをおこすことがある。
⑪その他、皮膚炎など。

このうち⑦の脱水症はとくに注意が必要で、ともすると心房細動から脳梗塞を生じるなど、思わぬ危険性をはらむ薬なのです。
残念なことに、早くも副作用によるショックな事件も報道されていました。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20141011-OYT1T50075.html

ところで、利点に挙げられた①~⑤のうち、③以外は糖質制限食で達成されます。
しかも⑥~⑪のような副作用もない。
となれば、使わずにすむ薬を省略できる糖質制限食が、なお一層重宝されてしかるべき、と考えます。
努力しても糖質を制限しきれない健啖家の方にとっての選択肢として、この薬の存在意義があるのでしょう。
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