がん予防を見越した糖尿病治療とは
2015年10月12日
最近のことですが、川島なお美さんが胆管がんで亡くなり、これと同時期に北斗晶さんが乳がん告白という出来事がありました。また4ヶ月ほど前になりますが、今井雅之さんが大腸がんで亡くなるという出来事もありました。いずれも若くして発症されており、これを機にがん検診を受けてみようと考え直した方は多いのでは、と想像します。今井さんも川島さんも、痩せ細った姿で闘病されていたのは衝撃的でした。
ところで、糖尿病患者さんは、糖尿病でない方に比べてがんの発生が多いことは古くから知られており、そのため糖尿病の合併症で最も重要なのはがんである、とさえ言われるようになっています。がんというのは、皆さんにとっておそらく身近な病気ではなく、まさか自分が、という思いでしょう。しかし、現実的に日本人は2人に1人は一生のうちにがんを経験し、克服する方もありますが、克服できない方もあり、結局3人に1人はがんで亡くなっている、という事実を受け止めるべきだと思います。糖尿病の患者さんは、これよりもがんの発生する確率が多いことになります。
そこで、糖尿病患者さんが少しでもがんになりにくくするためには、どのような対策があるのでしょうか。いくつか綴ってみます。
①野菜の摂取は多めに。:各種の抗酸化物質による活性酸素の除去
②発酵食品(乳酸菌)摂取は多めに。:免疫力の向上
③よく眠る。:睡眠ホルモン(メラトニン)による発癌抑制
④よく笑う。:免疫力の向上
⑤加工食品摂取をなるべく控える。:発癌性物質摂取を避ける
⑥タバコは吸わない。酒は適量まで。
⑦口腔内の衛生に努める。:これを怠ると口腔癌や食道癌発生が増える
⑧糖尿病治療薬にはメトフォルミンを使う。:これを使用することで、癌の発生が減少することがわかっている
①から⑦は、糖尿病でない方にも共通することで、どこかで聞いたことがあるかと思います。また①②は腸内フローラの改善にも共通することです。
それぞれについて詳説すると紙面が足りませんので、またの機会に譲ります。⑧については、2型糖尿病患者さんが食事療法と運動療法で制御不十分となった場合、最初に使う薬は何がよいか、という議論になりますが、これは医師によって意見が異なります。私は総合的にはメトフォルミンがよいと思っています。ただし条件によってはこれ以外の薬を第一に使うこともあります。
今後の糖尿病治療は、がんや認知症も含めて合併症を総合的に極力減らし、健康長寿を実現するための有効なアドバイスをできるようにすることだと思います。