No.1にならなくてもいい
2016年02月01日
やっと本格的な冬を迎え、インフルエンザ流行も始まりました。久しぶりのブログ更新になります。最近の巷の話題はいくつかありますが、ひとつ挙げるならSMAP騒動でしょう。まるくおさまっていくのかどうか、気になります。日本経済に影響を与えかねない問題であるためか、何と国会で首相に質問した議員がいたとか。
今回は、糖尿病治療における低血糖に対する注意について述べます。
日本糖尿病学会が、糖尿病治療の目標値設定として、熊本宣言を発表したのは2013年5月のことになります。患者さんの中にも、熊本宣言という言葉も含めて、その内容を知っている方がいらっしゃいます。血糖値は下げれば下げるほどよいといものではなく、患者さんの条件によって流動的に設定しようというものですが、基本的にはHbA1c値を7.0%未満に保つようにし、正常な耐糖能の人なみの血糖値を目指す場合はHbA1c値6.0%未満を目指そう、となっています。
しかし、実際には薬を使った糖尿病治療においては、思いがけない場面で低血糖発作が少なからぬ患者さんに起こっていると思われます。従ってHbA1c値6.0%未満という目標値は、いつでも低血糖発作を起こす可能性があり、現実的でないと感じます。
私が所属する日本ローカーボ食研究会では、来る平成28年3月6日に第6回学術総会が開催され、低血糖を1回も起こさない治療がテーマとなっています。この会の中で、僭越ながら私も壇上で2題しゃべらせていたくことになっています(こちら)。重症低血糖発作を1回でも起こすと、心血管病で死亡する危険性が2.69倍(ADVANCE試験より)にも上昇し、また、低血糖発作を反復するごとに認知機能低下が起こる危険性が1.26倍~1.94倍も上昇することがわかっており、それは血糖値を積極的に下げることの利益を完全に打ち消してしまうものになるはずです。このことを強調し、無理のない目標値を提唱したいと思います。
研究会は、医師のみでなく栄養士、薬剤師、看護師などの方も参加できるものですので、このブログをお読みになった有志の方は、ぜひご参加下さい(3月6日は日曜日で、少々の参加費が必要です)。
ところで今回のブログのタイトルですが、言わずと知れたSMAPの代表曲「世界にひとつだけの花」のオープニングです。この名文句を糖尿病治療に当てはめると、1番を目指して血糖値を下げなくてもいいよ、と語っています。私には2人の糖尿病患者さんが、お互いの成績を競い合っている様子が目に浮かんできます。カーレースに例えるなら、1等賞を目指すとコーナーぎりぎりを攻めることになりますが、たまにコースアウトしてしまうのが、低血糖発作ということです。実際の糖尿病治療においては、それが死亡リスク増大、認知症リスク増大、という甚大な不利益につながるわけですから、そんな無理をしなくてもよい、と先人たちは教えてくれているのです。SMAPも無理せず活動を続けて欲しいものです。