週刊誌報道と横紋筋融解症について

週刊誌報道と横紋筋融解症について

2016年06月27日

 梅雨入りして、すっかり暑くなりました。ちょっと前のことですが、イチロー選手、やりましたね、安打数世界新記録達成。久しぶりにスカッとしました。1つずつ、コツコツやること。基本に忠実であること。満足・慢心しないこと・・・どんな領域にも共通する、成功への王道だと思います。
 さて、イギリスの大変革をはじめとして世界経済は混沌としていますが、医療の方では、これまでの努力に横槍を入れるような報道があります。一つは最近、ある一般週刊誌に掲載されている、医療に対するバッシング記事。もう一つは、小林麻央さんの乳癌にからんで、がん検診は本当に役に立っているのか、という報道。いずれも、まれに起こる事態を大きくクローズアップすることで、医療に否定的な報道に仕上げることは簡単にできる、という例です。我々は、こういった報道には慣れているつもりです。しかし、一般の方はどのくらい影響されてしまうのでしょうか。心配です。短絡的な判断をなさらないよう、ぜひ冷静になって欲しいものです。
 前者の週刊誌報道は、ご丁寧なことに今日まで4週連続で掲載されています。主に薬漬け医療を否定する内容で、高い薬や、よく使われる薬について、まれにしか起こらない副作用を強調するなどして、使うべきでない・のむべきでないと一括してバッシングされています。また手術否定の記事もあり、今後も連載が続くかもしれません。細かいことを1つ1つ述べればきりがありませんが、全体的に見て「斜めから見た評価」となっています。とくに糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬に対する批判はかなりひどいもので、SU薬を使わなければ安全性は誰もが認めているものです。
 これらの記事を見て、薬の服用や通院をやめてしまう患者さんがいらっしゃるかも知れませんが、服用をやめた貴方が不利益を被ったとしても、責任を取ってくれる人がいるわけではありません。あえて深読みすると、このバッシング記事は、少しでも医療費の増大に歯止めをかけることを目的としているように思えてなりません。そうであれば、5月末から掲載が始まったことにも意味があるかも知れないと考えています。貴方が医療費の抑制に「協力」してあげる必要はなく、そもそも各医療機関レベルで、医療費がむやみに増大しないように尽力されてしかるべき(私はそう信じています)です。不要な薬のチェックや、無用な検査を避けることなどがこれに当たります。
 ただし、批判の根拠となっている副作用は事実無根のものではなく、例えば糖尿病や高血圧症の治療における「下げすぎ」の弊害については、我々にとって周知の事実です。また、スタチン剤などによる横紋筋融解症は、これからの季節の熱中症でも起こりうるものとして、とても重要と思います。これの機序や意義について深く知ることが、実は当クリニックが目指す健康長寿ともかかわってくる、重要事項です。やはり1回では書ききれませんでした。続編をお待ち下さい。