熱中症と横紋筋融解症について

熱中症と横紋筋融解症について

2016年07月18日

梅雨明けも間近かと思われますが、蒸し暑い毎日です。参議院選の後は都知事選。今年も暑い夏になりそうです。
さて、前回もとりあげた週刊誌報道ですが、その後7週連続掲載に及んでいます。診療の中でもこれに関する問い合わせが多くなっています。しかし、たかが週刊誌の記事と侮らず、これらの記事が、もしも医療費抑制を大義名分として書かれたものであるならば、公平な立場で考え直さなければなりません。どうしたら皆様に良質な医療を提供しつつ、医療費を抑制できるのか。これはとてつもなく難しい問題で、軽々しく結論を出すことはできません。そこで、ここでは主にコレステロール降下薬によって現れる副作用として注目の横紋筋融解症について、考えてみたいと思います。
まず述べておきたいことは、横紋筋融解症はめったに起こらない副作用です。薬をのむことだけの要因というよりは、もともと腎機能低下、甲状腺機能低下があったり、脱水、運動負荷といった二次的な要因がからんだ時に発生しやすくなるとされています。ところでこれからの季節で懸念される熱中症は、脱水症状を含んだ、とても危険なものです。すでに昨年を上回る数の入院患者さんが発生しているとのことです。熱中症の結果として深部体温が上昇した場合、横紋筋融解症がおこり、急性腎不全などを合併して時に生命の危機に陥ります。このことは、十分理解しておく必要があります。
後に徳川2代目将軍となった徳川秀忠は、3万8千の大軍を率いて木曽の山中を縦走したものの、結局、関が原の戦いに間に合わなかったことは有名な史実です。その途中、秀忠は、血の小便が出るほど急いだのに、と漏らすシーンが過去の大河ドラマにありました。これも史実かどうかは分かりません。しかし本当であれば、暑い山中(現在の10月にあたるそうですが)での脱水に加えて過重労働したためにおこった、横紋筋融解症に間違いないと思われます。
実際には、発熱、倦怠感、筋肉痛(かぜと紛らわしい)とともに、赤褐色(コーラ色)の尿が出ます。横紋筋に含まれるミオグロビンについては、過剰摂取すると糖尿病発症リスクを増加させうるものとして過去のブログ(2012/10/27~2012/12/02)でも述べましたが(http://www.muramoto-clinic.com/blog/blog/2012/10/)(http://www.muramoto-clinic.com/blog/blog/2012/11/)(http://www.muramoto-clinic.com/blog/blog/2012/12/)、排出している赤い尿は血液の色ではなく、ミオグロビンの色です。赤い筋肉をすりつぶしたもの、と考えれば理解しやすいと思います。血液ではないのに、一般の尿検査では潜血反応陽性となる(ヘモグロビンとミオグロビンの構造が似ているため)ことも、憶えておくべきと思います。
このように、水分や塩分を十分に補給せずに炎天下で運動すれば、誰でも熱中症から横紋筋融解症になります。ゴルフやテニスや登山などをなさる方は、十分すぎるくらいに注意していただきたいと思います。私の結論としては、薬によって、まれにしか起こらない横紋筋融解症を心配するくらいなら、熱中症対策を講じる方が現実的には有意義である、と私は考えます。

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