家庭血圧を読み解く② ME差について

家庭血圧を読み解く② ME差について

2016年08月16日

夏も中終盤。オリンピックの真っ只中です。選手達のがんばりには敬意を払うほかありません。精神面も含めた厳しい鍛錬が、いい結果を生んでいるのですね。この後も注目です。

家庭血圧測定を基本とした高血圧治療において、最も重視するのが、このME差です。早朝の血圧(平均値)と就寝時血圧(平均値)の差を意味しており、MorningとEveningの頭文字をとってME差と呼んでいます。

ここで家庭血圧測定の基本に戻りますが(2016年5月5日ブログ参照)、朝は朝食前に計ることが絶対条件です。夜は就寝直前に計るのが基本ですが、入浴直後と飲酒後に計測するのは避けるべきです。このへんは、患者さん個々の生活様式をしっかり聞く必要があります。具体的には飲酒習慣のある患者さんはその飲酒量、また入浴時刻と就寝時刻から考え、その患者さんに適した計測タイミングを、当院では指導しております。具体的には、飲酒開始直前であったり、入浴直前であったりと、様々です。

初診された段階で、このように計測タイミングを決めているのですが、その後、何らかの都合で患者さんが計測タイミングを変えていらっしゃることを、しばしば見かけます。高血圧診療は、こんなところに気づくかどうかも、重要と考えています。

さて、早朝と夜の家庭血圧は、理想的には差がないのがよいのですが、早朝の血圧が夜よりも高い場合、通常よりも脳卒中発症率が多いことが問題となっています。実際には、ME差15mmHg未満なら問題ないとされていますが、これをはるかに越えるME差を示す患者さんもいらっしゃいます。

そのような場合、早朝血圧が上昇する原因を考察します。ざっと挙げますと、①高塩分摂取、②睡眠時無呼吸症候群の合併、③無呼吸ではないとしても睡眠の質が不良、④就寝前の多量の飲酒、⑤交感神経の過緊張、といった問題点が内在していないかどうかを考えます。高齢の患者さんの場合、①と③は、夜間覚醒、夜間排尿といった形であらわれることが多く、密接に関係してきます。こういった場合、軽い心不全を合併しているケースもあり、かりに男性なら前立腺肥大があるかどうかも、関わってきます。夜中に苦しくなって目がさめたことがあったり、いやな夢をよくみたり、といった場合は②、③が疑われることになります。

実はこれらの鑑別はそれほど簡単ではありませんが、当院ではこれらを探る問診の後に、見当をつけるべく、諸検査を試みます。①については尿中ナトリウム定量、②については終夜睡眠ポリグラフィー、⑤については24時間自由行動下血圧測定、といった検査が施行できる体制を整えております。これらの検査の結果から、適切な治療でME差が改善することを、いつも願っています。次のブログでは、ME差を改善させるための、薬を使った治療法と、薬以外の治療法(生活指導)について述べます。

LINEで送る
Pocket