果糖に関するデマ①-果糖摂取は血糖値を少ししか上げない?

果糖に関するデマ①-果糖摂取は血糖値を少ししか上げない?

2016年09月26日

オリンピック、パラリンピックが終わりました。プロ野球は佳境、大相撲は、日本人力士の全勝優勝に久しぶりに沸きました。そんな中で、気づけば勉学の秋です。久しぶりに糖尿病関連のことを書きます。
糖尿病診療の中で、よく問題になるのが、くだものは食べてもよいのかというものです。健康志向の方が、お好みのスムージーを作って飲んでいるという事実もあり、正しい知識を得ていただく必要があります。
ところで、くだものが含む果糖については、2つほど、誤解されていることがあります。その一つが、今回取り上げることで、血糖値への影響です。
くだものはいずれも甘いですが、その甘みの成分は、主にブドウ糖、果糖、ショ糖の3種があり、くだものの種類によって様々な割合で混在しています。ショ糖は小腸壁で吸収される際にブドウ糖と果糖に分解されますから、結局はブドウ糖と果糖の2種類が重要です。
ブドウ糖は、当然のことですが血糖値を上げます。では、残りの成分である果糖はどうでしょうか。これには、代謝の知識が必要です。
果糖は、小腸壁から吸収された後、門脈を通って肝臓へ流れ込みます。肝細胞の中で、果糖は速やかに3段階の代謝を受けて、グリセルアルデヒド3リン酸という物質に変化します。肝細胞中にはこの物質の濃度が急速に上昇しますが、その後、一部はそのまま解糖系へ進んでエネルギーとして利用されたり、アセチルCoAを経て中性脂肪合成へ進みます。しかし、一部は糖新生へと逆行することが知られており、血糖値を上昇させます。
実際、2型糖尿病患者さんに果糖だけを実験的に摂取してもらった後の血糖値を測定した論文では、血糖値は確かに上昇しており、同等量のブドウ糖を摂取した時に比して39%の上昇度と報告されています。果糖摂取で血糖値は「全く上がらない」とか、「少ししか上がらない」と聞いておられた方は多いと思いますが、以外に上昇する事実に、驚くのではないでしょうか。くだものにはブドウ糖も含まれますから、くだものを食べると、現実にはブドウ糖による血糖値上昇も加わってきます。
では、くだものは極力食べない方がよいのでしょうか?意外にも、私の答えは、ノーです。いきつくべき結論を先に述べますが、「くだものは健康食品である」と思っています。その理由は、少し複雑なので、続編で述べます。