家庭血圧を読み解く③ ME差の是正について
2016年12月26日
いつの間にか年末、久しぶりのブログになります。冬ですので、やはり血圧の話題が優先です。
先回のブログで述べたように、ME差が存在する場合、①高塩分摂取(とくに軽度の心不全を合併した例)、②睡眠時無呼吸症候群の合併、③その他の原因による睡眠不足、④就寝前の多量の飲酒、⑤交感神経の過緊張、の可能性を考えます。問診では、仕事のある患者さんについては土日曜の家庭血圧は高くないかどうか、また飲酒習慣の有無を踏まえながら、夜間に覚醒、排尿することがあるか、悪夢をみたり、覚醒時に苦しい感じがしたり、発汗したりすることがあるか、外食などでたくさん夕食を食べると、翌朝の血圧が高くないかどうか、早朝の排尿は多量であるかどうか、また夕方以降に下肢のむくみがひどくないかどうか、といったことを聴取します。これである程度問題点が浮き彫りになったら、確認のために尿中ナトリウム定量検査や、24時間自由行動下血圧測定検査を施行している訳です。
実際、食塩感受性を持つ患者さん(食塩多量摂取で翌朝の血圧が明らかに上昇するなど、食塩摂取量によって影響を受けやすい患者さん)では、しっかりと減塩食を実行してもらうか、あるいは利尿薬を併用することで、夜間の排尿回数が減り、早朝の家庭血圧が低下するといった、劇的な改善を認めることがあります。また中等度以上の睡眠時無呼吸症候群(CPAP治療が必要)を合併している患者さんは、現在のところ当院の高血圧患者さん全体の約3パーセントに発見されており、なかなかの高頻度です。今後、さらに発見される可能性もあり、慎重かつ積極的な診療が求められています。高血圧診療は、地道に取り組む事に尽きる、と考えている次第です。
さて、下肢浮腫のある患者さんに対しては、減塩食や利尿薬投与以外の方法もあり、これもいずれ述べます。