2011/12/04 マイコプラズマ肺炎と百日咳 @名古屋 内科
2011年12月05日
確実に冷えるようになってまいりました。いかがお過ごしでしょうか。
さて今回は感染症の話です。
先月のことですが、天皇陛下が11月4日から発熱、11月6日には咳もあって入院されました。
いったん改善したかと思うと、11月11日に再度発熱と咳が出現し、結局、マイコプラズマによる気管支肺炎と診断され、24日に退院されました。
このマイコプラズマというやつは、強い咳をきたす代表的な病原体です。
潜伏期が2~3週と、比較的長く、発熱や倦怠感で始まり、3~5日後に咳が始まり、咳は次第に強くなってきます。痰がほとんどでない咳です。
今年は多数発生しているので要注意と、かなりよく報道されていました。
マイコプラズマがやっかいなのは、何度でも感染してしまう可能性があることです。
もう一つ、強い咳をきたす感染症といえば、百日咳です。
これは1~2週の潜伏期の後、鼻水やのどの痛み、軽い咳といったかぜ症状が2週間ほど続き、この後に強い咳が出る痙咳期(けいがいき)に入り、これが2~3週間続きます。
この2つの病気は、日常の中によくある病気です。
普通の風邪に比べて、いずれも夜間に悪化する咳が特徴です。
とくに小児におこった百日咳の咳は、いわゆる咳き込みのあとの咳あげや、強い咳のあと、息を吸い込む時に笛のような特徴的な音がする性質があります。
生後6か月前後に3回、1歳半ころに1回の、三種混合ワクチン(DPTワクチン)を接種するのですが、接種してあっても通常10歳以降は抗体価が下がり、感染してしまいます。
ワクチンの接種し忘れの場合は悪化するので危険です。
マイコプラズマ肺炎と百日咳を確定診断するには、血液検査で抗体価を測定することが多いです。
夜間に悪化する咳が2週間以上続いている患者さんから血液検査をさせていただくと、結構な頻度でいずれかが発見されます。
抗体価がはっきり上昇していれば、1回の採血検査で診断できますが、2回の採血を必要とする場合もあります。
今回の天皇陛下の場合、胸部レントゲンで淡い影があったようで、このため「マイコプラズマによる気管支肺炎の可能性が高い」、と発表されました。
つまり採血検査はしなかったようです。
実際の診断において難しいのは、成人の百日咳は咳が弱い場合もあったり、マイコプラズマ感染症は、とくに5歳未満の小児では一般風邪症状だけで治ってしまったりすることで、すべてを見つけることは難しいと思います。
また強い咳や発熱をきたす病気として、クラミジア肺炎、インフルエンザ、RSウイルス感染症などもあげられることで、これらとの鑑別診断も必要です。
複雑な話になってしまいましたが、いずれの病気にしても、結局は一般的な予防対策をして、それでもかかってしまったらなるべく早く受診していただくことだけです。
師走に入り、気忙しいと思いますが、皆様、ご自愛ください。
愛知県名古屋市千種区にある内科で食事療法による高血圧や糖尿病治療ならむらもとクリニックへ