高血圧が招く病気

1.高血圧は心臓病や脳卒中を引き起こしやすい

血圧が高くなると、常に血管に刺激がかかって、動脈の壁が傷みやすくなるのが大きな問題です。それと同時に、心臓も多くのエネルギーを必要とし、疲れやすくなります。
したがって高血圧は、血管や心臓に障害をもたらします。

心臓や血管等の病気(循環器病)の危険因子

喫煙
高コレステロール血症
糖尿病および糖尿病予備軍
高齢(男性60歳以上、女性65歳以上)
若年発症の心血管病の家族歴 等
心臓や血管等の病気(循環器病)の危険因子

高血圧の状態が続くと、心臓は過重労働に対応しようと心筋を増やし、大きくなります(心肥大)。また血管(主に動脈)は、高い血圧に負けないように壁を厚くします。高い圧力によって血液の成分が動脈の内壁に入り込んで、それにコレステロールが加わるなどして動脈硬化が進行します。
動脈硬化は全身に起こりますが、特に多くの血液を必要とする臓器である脳や心臓等に害が及びます。

心臓の筋肉に酸素と栄養を運ぶのは冠動脈(冠状動脈)と呼ばれる血管ですが、これが動脈硬化をおこし、プラークの破綻によって血の塊が生じ、こうして血管が詰まって心筋が血流不足から壊死に陥るのが心筋梗塞(急性冠症候群)です。少々難しい過程なので、詳しくは診察室でお話しします。

一方、脳の動脈に高い血圧がかかると、心筋梗塞とは異なる過程で動脈が閉塞します。この結果、脳組織の一部が死んでしまうのが脳梗塞です。また、高い血圧がかかると脳の血管が破れることもあり、これが脳出血です。当院では、脳卒中の危険性を評価するために、頸部エコー検査を施行しており、頸動脈の動脈硬化の程度を知ることができます。体に負担なく、気軽に受けていただける検査です。

脳梗塞と脳出血にクモ膜下出血を加えて、これら3つを総称して脳卒中と言います。心筋梗塞と脳卒中、どちらも、命にかかわることがある、恐ろしい病気です。1日の中での血圧の正常な変動は、夜間の就寝時にはやや低下するものですが、夜間や早朝の血圧が通常よりも高いパターンを示すと、脳卒中の危険性が高いことが知られています。当院では、このようなパターンになっている可能性のある患者さんには、自動的に血圧を測定する装置をお貸しして、24時間自由行動していただいた状態の血圧の変動を調べることができます。これによって1日の血圧パターンを調べ、より適切な治療へと結びつけることができます。

2.腎臓にも負担がかかってくる

2.腎臓にも負担がかかってくる

虚血性心疾患や脳卒中の陰に隠れて、あまり知られていませんが、腎臓も動脈硬化の影響を大きく受けます。

腎臓は、血液の中から老廃物を濾過して取り出し、それを尿にして体外に出すという働きを持っている臓器です。そのため、腎臓の本質部分は、毛細血管の塊のようになっています。したがって腎臓は高血圧の影響を受けやすい臓器で、高血圧によって動脈硬化が起こると、腎臓の働きは次第に低下してしまいます。しかも、日本人の腎臓は、他の民族に比べて弱いことがわかっています。

手軽に行える尿検査で、尿タンパクが陽性であるかどうかを調べるのが、腎臓を含めて全身の動脈硬化があるかどうかを知るのに役に立ちます。尿タンパク陽性が続く状態を慢性腎臓病と呼びます。

高血圧の治療が進歩して、昔に比べれば慢性腎臓病になる確率は減っているものの、日本人全体の高齢化、高血圧患者さんの増加によって、高血圧による慢性腎臓病は増えています。実際、人工透析を受けている方の原因の第3位は高血圧などによる腎硬化症(2002年/不明分を除く)で、1993年からの10年間に2.5倍に増加しています。