糖尿病の治療
糖尿病の治療の基本は、食事療法と運動療法です。
食事療法と運動療法で効果が不十分の場合は、薬物療法が必要になります。
食事療法
糖尿病と診断された場合、まず、日常生活でどのような食生活をされているのか、詳しくお聞きします。朝食・昼食・夕食のタイミングやそれらの量を評価し、どのように変えていけばよいかを、患者さんの生活様式に合わせて選ぶように工夫します。
糖尿病の食事療法として、一般には、総カロリー制限が用いられます。身長から標準体重を割り出し、1日に食べるべき量を、次のように決めます。
総カロリー=標準体重×仕事別消費カロリー
仕事別消費カロリー:(標準体重1kg当たり)
- 事務職、主婦………………25~30kcal
- 中程度の労働に携わる方…30~35kcal
- 重労働に携わる方…………35kcal
実際には総カロリーのうちの糖質のカロリーの割合は、60%程度が推奨されてきました。
しかし、食品ごとのエネルギー量の計算を日々行うことは大変で、継続が難しいものです。幸い、最近になって、糖質のカロリーを全体の45%ほどまで減らすこと(糖質制限食、低炭水化物療法、ローカーボダイエット)が、糖尿病の治療成績を改善することや、かつ安全性もわかってきました。うまくいけば糖尿病の薬を使わず、あるいは薬を最小限にして糖尿病をコントロールすることができます。
糖尿病専門と名乗る多くの医師が、糖尿病の患者さんに、なるべく脂っこいものを控えるように指示してきたのに対して、この低炭水化物療法では、糖質(すなわち白米や麺類、パンなど)の摂取を控える代わりに、脂質を食べることを恐れないように指示します。したがって非常に斬新な治療法と言えるものです。しかし、決して異端の治療法ではなく、アメリカではすでに主流になりつつあります。
当院では、患者さんの生活様式を問診した上で、上に述べた糖質制限食を場合によって取り入れ、より実践的で継続しやすい食事療法のコツを、お教えしています。糖質制限食がどんな患者さんに適するか、あるいは適さないかも事前に予測できますが、一言で言えば、典型的なメタボリックシンドロームの患者さんに、とても適しています。詳しくは診療室でお話しします。
運動療法
予防のための運動とは違います。それぞれ、自分に合った運動メニューを作ります。その基本は、次の通りです。強調したいのは、運動療法を併用することはとてもメリットがあります。しかし、忙しくて運動する時間が全くない方は、その分、しっかり食事療法をすべきでしょう。
ひとりでできる運動を選び、毎日同じくらい行う
場所を選ばず、いつでもどこでもできる運動を選び、毎日が無理でも2日に1日は行いましょう。
ウォームアップとクールダウンを行う
運動は1日30分が目安です。まずはゆっくりスピードを上げて(ウォームアップ)、終了時はゆっくりスピードを下げていきます(クールダウン)。ウォーキングの場合、1回15分~20分を目安にして、1日1万歩を目安にしても良いでしょう。
運動の強さは、きつ過ぎず、楽過ぎず
「少し汗ばみ、隣の人と楽に会話ができる程度」が目安です。運動の後、疲れ過ぎない程度に。
食後1~2時間後に行う
こうすると、食後の血糖値上昇が抑えられます。
運動日誌をつける
運動習慣を身につけるためと、運動によって体調が悪くなることを防ぐために、最初は日誌をつけましょう。
要注意
糖尿病の場合、急に激しい運動はお勧めできません。
薬物療法
主な薬物療法には、血糖を下げる為の血糖降下薬という飲み薬と、インスリンがほとんど分泌されない人や不足の人の為のインスリン注射があります。
まず、1型糖尿病の方では、体内のインスリン量が絶対的に不足しているため、必ずインスリン注射が必要になります。
それ以外の型でも、食事療法や運動療法で効果が現れない場合には薬物療法を行います。
要注意
医師に相談せずに勝手に止めたり、多く使ってはいけません。
薬を飲み始めて調子が悪くなりましたら、必ず医師に相談してください。
最後に、糖尿病は自己管理がとても大切な病気です。
逆に、自己管理さえできていれば、普通の人と変わらない生活ができるので、もし糖尿病になっても、気落ちする必要はありません。
生活習慣がとても大切ですので、改めて自分の生活を見直してみましょう。
糖質制限
糖質制限が必要な方とはどんな方でしょうか?
糖質制限が必要とされる方は、主として以下に該当する患者さまです。
(1)糖尿病の患者さま。中でも、インスリン抵抗性の改善が求められる場合には特に有効といえます。インスリン抵抗性の改善には、「痩せる」ことのメリットがとても大きいからです。
(2)脂肪肝、高尿酸血症、高血圧を合併しているケース。これは、糖質制限によって体重を減らすメリットが、とても大きいといえます。
この2つのほかにも、尿酸値とメタボリックシンドロームの関連性に定義はありませんが、メタボリックシンドロームの人はたいていの場合、尿酸値が高い傾向にあります。糖質制限で痩せることで、尿酸値の改善も期待できます。
炭水化物を抜き、食事の量そのものは減らない糖質制限は、メタボリックシンドロームに合っている食事療法といえます。糖質制限にもいろいろなやり方がありますが、体に負担がかからず、長期間続けてよいのは、ゆるやかな糖質制限です。無理な食事療法は、健康面でおすすめできません。
なお当院では、ただ「痩せたい」という美容願望のための糖質制限を、おすすめすることはありません。
糖質制限を行う方への注意点。
3食すべて主食(ご飯やパン)を食べない「厳しい糖質制限」は、自己判断で行うとかえって健康を害する可能性があります。
糖質も、一定量は体に必要な栄養なので、やりすぎは危険です。医師の指導を守り、ゆるやかな糖質制限に努めましょう。
糖質制限では、糖質の量を抑えるかわりに、肉や魚といったタンパク質の量が増えることになります。しかしタンパク質は、増えて危険なことはないのでご安心ください。
強いていうならば、主食(ご飯やパン)を減らすことでおかずの量が増え、その結果、塩分過多になる可能性があります。
その場合は、生野菜や茹で野菜を食べることで、塩分の総量をコントロールしましょう。
むらもとクリニック様でうけられる治療について教えてください。
当院の糖質制限治療は、食事指導が中心です。
食事指導は、最初に行った指導を、患者さまが忠実に実行していただくことが重要です。そのために、その後のフォローアップが非常に重要となります。
生活環境の問題や、ご本人の意志の問題など、経過観察の中であまり改善が見られなかった場合は、管理栄養士による食事調査や指導も行なっています。
また、糖質制限をしている患者さまで、糖尿病などを併発している人には、投薬治療も行います。
費用について
当院の糖質制限治療は、すべて一般治療(保険内治療)となっています。それ以外の治療費は必要ありませんのでご安心ください。